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『自社ビルを買ってはいけない』理由を自分なりに考えてみた

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よく、「自社ビルを買った企業は不調になる」という話を聞きます。

自社ビル購入により経営者が満足してしまい、ハングリーさが無くなる…
という事がその原因の1つだと言われていたり、
また「資金繰りが悪くなる」とも言われたりします。

経験則としては合っているのかもしれないのですが
「本当にそうなのか?具体的にどう資金繰りが悪くなるのか?」
ということを自分なりに考えてみました。

色々考えた結果、デメリットとして大きいと感じたことは、2点あります。

◎資産は増えるが、返済+税金支払が重くのしかかる。

自社ビルを購入すると、「資産」は増えます。
一般的に「減価償却費 < 賃貸した場合の家賃」ですので、 多くの場合「純資産」も増えていきます…が、資金繰りは悪くなります。 なぜ資金繰りが悪くなるのかと言うと、 借り入れ比率が高い場合に 「賃貸で入居した場合の家賃」<「銀行への返済」+「利益が出た分の法人税・事業税支払い」 という状況に陥ってしまうためです。 銀行へ返済し続けて完済すれば自社の資産になるので 資産は増えているのですが、 資産が増えて帳簿上は黒字幅が広がるため 黒字幅が広がった分だけ税金の支払も増えてしまうのです。 (黒字企業の場合。利益規模にもよりますが、小さな会社であれば  税率は法人税と事業税などを足して利益の3〜4割程度となります) つまり 「賃貸で入居すれば月100万円だけど、購入すれば銀行への支払いは月90万円になる」 みたいな算段をしていても、それ以外に税金の支払いが必要なので 合計すると月100万円以上の「現金」が出て行ってしまうということです。 この場合、月100万円の家賃でギリギリの経営をしていると、 税金支払いによって資金繰りが破綻する危険があります。 賃貸で入居した場合の想定家賃が100万円だったとして、 法人税と事業税をあわせて税率30%の場合は、月70万円程度の返済、 税率40%の場合は、月60万円程度の返済で収まるようにすると ようやく賃貸オフィスの場合と同等の資金繰りが可能になります。

資金調達がしづらくなる

「じゃあ、税金支払を含めて払える計算なら買ってもいいのか?」
という疑問が浮かぶのですが、それ以外にも大きなデメリットがあります。

これが成長企業にはかなり致命的なデメリットになるのですが、
貸借対照表で負債割合が増えることで
外部からの資金調達がしづらくなるという事です。

参考:貸借対照表の固定資産を少なめに

つまり、中小企業の借り入れできる金額なんて
もともと限られているのに、その貴重な「枠」を
本業の成長とは関係ないところで使うのはもったいないよ…という事です。

全国に支店を持つ会社が本社だけ自社ビルにするのは
まだ良いのかもしれませんが、
東京本社に全社員を集めている企業がその本社ビルを購入しようとすると
どうしても会社規模に対して固定資産が過大になってしまいます。

(地方だと今度は資産価値的にどうなのか…という問題も出てきますが)

平たく書くと「身の丈に合わない固定資産は持つな」ということです。

先日こういうセミナーに参加したのですが、そのセミナーでは
「(不動産に投資する場合)借り入れは総資産の3割までにするのが良い」
という話を聞きました。
理由は色々とあるのですが、それに通じる部分もあると思います。

あまりに借り入れ依存度が高いと、追加の融資も受けにくいし
金利負担も増してくるので、金融機関のために働いているような状態になってしまいます。

まとめると、資産を増やすという意味では良いことなのですが
資金繰りという観点から考えると
◎短期的にはキャッシュ・フローが悪くなる
◎急拡大を目指す時に追加の資金調達がしにくくなる
というデメリットが大きく、成長企業の打つ手には全くマッチしないという結論に至るのです。

資金繰り以外のデメリット

また、資金繰りとは別の問題になるのですが
オフィス家賃が浮いた分だけ帳簿上は利益が出てしまうため、
「ウチは儲かっている」と錯覚してしまう危険もあるでしょう。

本業の利益が増えたわけではないのに、
そう錯覚してしまうのは結構危険なことだと思います。

どういう会社が自社ビルを買うべきか

ではどういう会社が自社ビル・自社オフィスを買うべきなのかと言えば、

[1] 返済額 < オフィスを借りる場合の想定賃料×(100% - 税率)が成り立つ (≒ 頭金を多めに用意できる or 相場より安く利回りの高い物件を買うことができる) →キャッシュフローが悪くならない [2] 今後の経営において、外部からの資金調達を必要としていない →外部から調達しないなら、バランスシートが汚れても関係ない この2点のうちいずれか、もしくは両方を満たした場合になるかと思います。 加えて、 [3] 今後大幅な拡大もしないし大幅な縮小もしない。もしくは、拡大・縮小しても運用に困らない という事もポイントになるかと思います。 (ソニーのように売却して利益を出す、みたいな例もありますが…) 成長中のベンチャー企業の場合、[1]を満たすことはできたとしても [2][3]については予想ができません。 というより、成長を目指すからにはどこかで資金需要があることはある程度 「前提」になってしまうので、いざという時に備えて バランスシートは極力キレイにしておくべきだと言えるでしょう。 【結論】不動産投資をしたいなら会社ではなく    個人(もしくは個人の資産管理会社)でやりましょう。 「じゃあ個人名義で会社の自社ビルを…」と考える資産家な方もいらっしゃるかもしれませんが、 諸々のリスクを考えると「自社で使う物件」にこだわらず 手堅く収益の出る住居用物件(※)を探して買った方が良いんじゃないかな、と思ったりもします。

※自社サイトのステマ